ERはEmergency Roomからきており、全ての救急患者に対してERで働くER専門医が基本的に救急初期診療と呼ばれる診断をまず行います。そして診断の結果として、入院が必要になった場合はER専門医が担当科に振り分けます。しかし、ER専門医はその後の入院や手術には関わりません。
そしてERには「トリアージナース」と呼ばれるER専門の看護師が配置されており、患者さんの重症度、緊急度を判断して振り分けます。トリアージナースが優先順位を定め、優先順位の高い患者さんから診療を実施するように振り分ける場合もあります。しかし、現在の日本ではERに関する明確な定義はなく、このような初期診療を提供している医療機関ごとに細かい部分の運用は異なっているのが現状です。患者さん自身が一次、二次、三次救急の施設を選ぶ既存の救急医療体制との違いとして、ERは一次、二次、三次救急に振り分ける人が別にいるという点で大きく異なっています。
ERがどのような機能を持っているかという点ですが、学会では以下に挙げる機能を持っているとしています。
さらに同学会ではこのような機能が厳密に働いているかを考えた場合、由来している北米とは体制が異なるため、医療施設によって上記の一部を満たすものがER型救急医療と呼ばれているとしています。つまり、国内には同じERでも様々な形式のERが存在しているのです。例えば東京では、石原慎太郎元都知事が「どのような患者でも受け入れる初期診療を行う救急診療科」と救命センターをあわせ持つ施設の「東京ER」を都立病院に設置しました。これも厳密に言えば、学会で定める全ての機能を満たしてはいません。
厚生労働省では昨年にER型救急のモデル事業を全国的に展開しようとする動きがありました。そして全国展開に向けた検討を続けてきましたが、その話はいつの間にか議論から消えることとなり、先送りされました。救急病院を拠点に展開する議論もありましたが、人材や様々な資源の集約化と効率が高まるといった観点から賛成する意見がある一方で、厚生労働省の病院の規制強化につながることを懸念した反発する声もあるなど、議論はなかなか進んでいません。